方針・考え方
おもちゃは主に子どもたちが使用するため、安全性に関する最大限の配慮が求められます。そのため、世界各国における国家規格、あるいは、業界内の自主規制によりおもちゃに備わるべき必要条件を定めていますが、その内容は文化や社会環境などの違いから複雑かつ多様になっています。加えて、技術の進歩や社会の変化に伴うおもちゃの多様化は、安全に関する必要条件の適用をますます複雑なものにしています。また、安全なおもちゃを提供するためには、国家規格等に適合するだけでは安全を担保出来ない場合もあります。過去からの経験やノウハウを活かして国家規格等で網羅出来ない部分を評価、検討し、より安全なおもちゃづくりに取り組んでいます。
タカラトミーグループでは、「安全で安心できるアソビ作りを環境に配慮して行い、世界のお客様に魅力のある良質なアソビを提供します。」を品質の基本方針として掲げています。タカラトミーグループの企画から生産まで一連の安全・品質管理の流れを仕組み化した社内規程「安全品質管理規程」と、商品の安全品質や化学物質に関わる基準「タカラトミ―グループ品質規程」を定めています。
体制
●安全品質統括部門
タカラトミーグループの商品の安全、品質や化学物質の管理は、代表取締役社長直轄の安全品質統括部が、タカラトミーグループ各社の品質部門とともに取り組んでいます。安全品質統括部の機能として品質統括と安全統括があり、品質統括では「タカラトミ―グループ品質規程」に基づく品質基準書の作成や、各工程での商品の品質確認を行い、安全・品質基準に適合した商品づくりを徹底しています。安全統括では、商品化の際に懸念される安全情報の検討や商品事故の防止に努め、万一事故が発生した場合には「リコール規程」に基づき、代表取締役社長を統括責任者とした危機管理対策本部を設置し、リコールの立案および実施、原因の究明、再発の防止などの対応を行います。
●安全・品質連絡会
安全・品質連絡会は、タカラトミーと国内グループ各社を主要メンバーとする会議で、安全品質統括部が定期的に開催しています。ここでは商品の情報を共有しながら改善策を立案、実行しています。
●安全リーダー制度、「遊びこみの会」
タカラトミーグループでは、毎年、国内外グループ会社や開発、営業、品質管理、お客様相談室などのあらゆる部署から1名ずつ「安全リーダー」を任命し、安全・品質意識の更なる強化活動を行っています。「安全リーダー」の任期は1年とし、毎年新たな「安全リーダー」が任命されます。多くの社員が「安全リーダー」を経験することで、全社的な安全に対する意識の醸成を図っています。「安全リーダー」は、1年を通じて自部門の安全啓発を行うとともに、商品の遊びの中で想定される安全・安心に関わる課題を抽出し、改善につなげることを目的にした「遊びこみの会」に参加しています。本活動で万一安全上の問題が発見された場合は、ただちに適切な改善を実施する体制を整えています。
取り組み
安全品質管理
タカラトミーグループは「商品安全品質管理規程」を策定し、企画から生産まで一連の安全・品質管理の流れを仕組み化することで、安全の確保と問題の未然防止に取り組んでいます。 特に製品の安全性については、STマークに代表されるような玩具業界での安全基準に留まらず、商品のグローバル展開に合わせ、より厳格な独自の安全基準である「タカラトミ―グループ品質規程」に照らした検査を実施しています。玩具は、さまざまなお客様に使用されており、特に子どもたちに対しては、成長段階に応じた配慮が必要です。そのため、「タカラトミ―グループ品質規程」に定める各種安全基準は対象年齢によって異なり、予見されるリスクを低減させるための基準設定を行っています。
現在の玩具に関する安全基準は主として以下が該当し、タカラトミ―グループ品質規程はこれらの基準に準拠しています。
食品衛生法(Japan Food Sanitation Law)
玩具安全基準(ST / Japan Safety Toy Standard)
消費者製品安全改善法(CPSIA / Consumer Product Safety Improvement Act)
連邦有害性物質法(FHSA / Federal Hazardous Substances Act.)
玩具の安全性に関する消費者安全規格(ASTM F963 / American Society for Testing and Materials)
EU玩具安全指令(Directive 2009/48/EC: Toys Safety Directive)
欧州玩具規格(EN71: European toy Regulations)
カナダ玩具規制(SOR/2011-17: Canada Toys Regulations)
中国国家玩具安全技術規範(GB 6675: National Safety Technical Code For Toys)
玩具の安全性に関する国際規格(ISO 8124: International Standard -Safety of toys -)
尚、上記以外にも参照している法規制があります。
企画から販売の流れの中では、生産技術、安全品質に関わる関係者による各開発段階でのデザインレビュー(以下DR)、量産を行う前の最終承認、出荷検査及び受入検査の実施など、徹底した安全品質検査体制を整えています。製品テストはすべての新製品、定番商品等リピート製品でも抜き取り検査を実施しています。加えて製造するおもちゃに対して、オーダーごと、もしくはある一定期間の製造ごとに特定化学物質の検査を実施し、商品の安全性を確認しています。
また、おもちゃの安全配慮は新たな遊びの登場やテクノロジーの進化とともに変化するため、「タカラトミ―グループ品質規程」に定める基準や検査内容は、必要に応じてアップデートを重ねています。2020年9月には「タカラトミ―グループ品質規程」2020年版の改訂版を発行しました。
さらに、楽しく安全に遊んでいただくために、子どもの行動を予測した上での警告・注意喚起を商品パッケージや取扱説明書、自社ウェブサイト上で表示するなど、子どもたち目線での安全対策にも注力しています。
化学物質管理
おもちゃはさまざまな部品や素材からつくられています。特に、部品や素材に含まれる化学物質による子どもたちの健康や環境への影響に十分に配慮する必要があります。おもちゃや電気・電子機器に含まれる部品や素材などに関する規制は国によって異なることから、「タカラトミーグループ化学物質管理方針」を制定し、製造時も含めた、有害化学物質の管理に努めています。
タカラトミーグループ化学物質管理方針(2022年5月制定、2024年6月改訂)
タカラトミーグループは、ONE TOMY’s Promiseに「高品質なアソビ体験の提供」、環境方針に「子どもたちが”笑顔”でおもちゃを楽しむことができる環境を守る」ことを掲げています。当社グループの製品、特に玩具は、子どもが主な対象であるため、その安全性を確保するために化学物質の使用については最大限の配慮が必要になります。また、未来の子どもたちのため、化学物質管理を適正に行い、地球環境を守っていくことが重要です。
様々な技術が進歩する中で、日本を含め世界各国で国家規格、あるいは、業界の自主規制が定められています。当社グループはタカラトミーグループ理念を実現するために、求められる基準に則り化学物質を適正に管理するとともに、人体や地球環境の保全に懸念のあるものに関しては危険性の低い代替素材への交換なども踏まえ、可能な限りその使用をなくしていくことをバリューチェーン全体で目指していきます。
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適用範囲
本方針は、当社グループ製品の製造に関わるすべての製造会社(協力会社、工場および下請け業者)を対象とします。
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関連基準
当社グループは、各国・地域の化学物質に関する法および規制や国際規格に従います。また、各国の国内法と国際的に認められた基準によって要請が異なる場合、より要請水準が高い基準を可能な限り尊重するよう目指していきます。
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管理領域・対象
本方針は、当社グループの玩具製品における化学物質に適用します。また、適用範囲を超えて、玩具以外の製品や生産プロセス全体へと、より広い範囲へ適用できるよう改善を目指します。
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管理物質
タカラトミーグループ品質規程で定める管理物質について、本方針のもと管理します。
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管理方法
当社グループ製品の製造会社に対しては、製造時における関連法並びに規制に基づく含有禁止物質の非含有遵守を要請した上で、タカラトミーグループ品質規程に則った管理の実施に努めてまいります。
また、製造委託先に対しては、「タカラトミーグループCSR調達ガイドライン」に基づき、組織全体として化学物質の適正管理を要請するとともに、適宜、管理方法のセルフアセスメント等の実施を依頼し、結果に応じて改善を要請します。
管理方法の一例として、重金属・フタル酸エステル類などの有害物質の混入を防ぐために、第三者検査機関と連携し、検査を実施しています。また、欧州においてRoHS指令、REACH規則、POPs規則などで排除・削減が求められている発がん性、変異原性、生殖毒性等が懸念される有害物質、高懸念物質については、製品の製造に関わる協力会社・工場を対象に、原材料や部品のアセスメント(CSA/Chemical Safety Assessment)を実施し、約5,000種類の化学物質をモニタリングしています。
今後、欧州に限らず対象地域を拡大し、万一、商品に混入した場合でも、当該商品が市場へ流出するのを防ぐ体制を整え、商品の継続的な安全品質の確保、管理の徹底に取り組んでいます。
タカラトミーグループ優先規制物質リストを見る
タカラトミーグループ優先規制物質リスト
分類 | 規制物質の一部抜粋例 |
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重金属 | 鉛、アンチモン、ヒ素、水銀、カドミウム、セレン、バリウム、クロム(3価、6価)、アルミニウム、ホウ素、 コバルト、銅、マンガン、ニッケル、ストロンチウム、スズ、有機スズ、亜鉛 |
フタル酸 エステル類 |
フタル酸ビス-2-エチルへキシル(DEHP/DOP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジオクチル(DNOP)、フタル酸ジ-n-へキシル(DNHP/DHEXP)、フタル酸ジイソブチル(DIBP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、フタル酸ジペンチル(DPP/DPEP/DPENP)、フタル酸ジイソオクチル(DIOP) |
難燃剤 | ハロゲン化合物(以下の限りではない) Tris (1-chloro-2-propyl) phosphate (TCPP)、Tris (1,3-dichloro-2-propyl) phosphate (TDCPP)、 Trio cresyl phosphate (TCP)、 Tris (2,3 dibromopropyl) phosphate (TDBPP)、Tris (2-chloroethyl) phosphate (TCEP)、Trisaziridinyl phosphinoxide (TEPA)、Tetrabromobisphenol A (TBBPA)、 Bis(2-ethylhexyl) tetrabromophthalate (TBPH)、Polybrominated diphenyl ether (PBDE)、Polybrominated biphenyl (PBB)、Polychlorinated biphenyls (PCB)、Hexabromocyclododecane (HBCD)、Short-Chain Chlorinated Paraffins (SCCP)、 2,3,4,5-Tetrabromobenzoic acid, 2-ethylhexyl ester (TBB)、Antimony trioxide、Tris-(2,3-dibromo-propyl)-isocyanurate (TBC)、Decabromo-diphenyl-ethane、TBBA-(2,3-dibromo-propyl-ether)、Bisphenol A diglycidyl ether, brominated、Brominated Epoxy Oligomers、Tetrabromobisphenol S Bis-(2,3-Dibromopropyl Ether) |
アゾ染料 | Biphenyl-4-ylAmine、Benzidine、4-Chloro-o-toluidine、2-Naphthylamine、o-Aminoazotoluene、 5-Nitro-o-toluidine、4-Chloroaniline、4-Methoxy-m-phenylenediamine、 4,4’-Diaminodiphenylmethane、3,3’-Dichlorobenzidine、3,3’-Dimethoxybenzidine、 3,3’-Dimethylbenzidine、4,4’-Methylenedi-o-toluidine、6-Methoxy-m-toluidine、 4,4’-Methylene-bis-(2-chloro-aniline)、4,4’-Oxydianiline、4,4’-Thiodianiline、o-Toluidine、 4-Methyl-m-phenylenediamine、2,4,5-Trimethylaniline、o-Anisidine、4-Aminoazobenzene、 2,4-Xylidine、2,6-Xylidine |
その他 | ビスフェノールA(BPA) ホルムアルデヒド ホウ酸 ペルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS) |
また、廃棄時の焼却処理による環境への影響を考慮し、包装材へのポリ塩化ビニル樹脂(PVC)の使用の原則禁止や、お客様の口に接触する可能性のある製品に対し、BPA(ビスフェノールA)が含まれている可能性の高い材料(ポリカーボネート等)の使用を禁止しています。
製品含有の化学物質管理プロセス
製品に含有する化学物質管理の取り組みとして以下の通り進めてまいります。
①管理化学物質
さまざまな国の法規制および社内基準をもとに「タカラトミーグループ製品規制物質リスト」を定め、製品の製造においてこのリストに沿って含有化学物質を管理することで、遵法性の確保と環境負荷の低減を図ってまいります。
また、このリストは法規制の拡大・改定への対応や自主規準の付加などにより、随時改定してまいります。
②工場監査による生産工場管理
製品の生産工場については自社独自の監査基準に基づく工場監査を定期的に実施し、適切に含有化学物質管理が実行できる工場での生産を行ってまいります。
③製品の含有化学物質管理システムの整備
製品の部品・材料などに含まれる化学物質を把握・管理するための管理システムの導入を進め、サプライヤー、生産工場の協力のもとに製品の含有化学物質の管理を進めてまいります。
④サプライチェーンを含めた化学物質管理
サプライヤー、製造委託先へは「タカラトミ―グループ品質規程」、「タカラトミーグループ製品規制物質リスト」を用いて製品や部材への含有化学物質管理を進めてまいります。
また、製品の含有化学物質管理について理解と協力を得るため、お取引先様向けの説明会を実施しています。
化学物質管理の仕組み
サプライヤー/製造委託先へ使用化学物質の
調査と管理を依頼
生産工場の監査
製品の含有化学物質情報をシステムに登録
化学物質情報の検証と製品検査
生産
最終検査
出荷
安心・安全・品質の研修・啓発活動
タカラトミーでは「商品安全品質管理規程」で安全品質に関わるさまざまな取り組みを定め、安全への意識をグローバルで確認しています。具体的には、国内外グループの全従業員が年1回一堂に会して安全品質の大切さを考える「安全の日」の実施、社員がお客様の目線に立ち実際の商品で遊ぶ「遊びこみの会」を一か月に1回程度実施しています。「遊びこみの会」で万一安全上の問題が発見された場合は、ただちに適切な改善を実施する体制を整えています。2009年からはじめたこの取り組みは、現在では日本、タイ、ベトナム、中国などの各生産グループ会社でも同様に実施しています。