タカラトミーグループの
サステナビリティ

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そもそも共遊玩具って?

共遊玩具とは、障害のある子ども向けのおもちゃではなく、視覚や聴覚に障害のある子もない子も「共に楽しめる」おもちゃとして一般市場向けに販売されている商品のことです。たとえば、触覚でも色や絵柄の違いを識別できるようにしたり、おもちゃから出る音声を動きやアニメーションでも表現するなど、一人でも多くの子どもたちが楽しく遊べる工夫や配慮がされています。
目が不自由な子どもたちを考慮した商品には「盲導犬マーク」、耳が不自由な子どもたちを考慮した商品には「うさぎマーク」をパッケージに表示。玩具売り場でも、共遊玩具であることがひと目で分かるようになっています。

盲導犬マーク

盲導犬マーク

目が不自由な子どもたちを考慮した商品

うさぎマーク

うさぎマーク

耳が不自由な子どもたちを考慮した商品

こうした共遊玩具の開発に30年以上も取り組んでいるタカラトミーグループは、現在年間約300種類もの共遊玩具を世に送り出し、子どもたちの「心のバリアフリー」を推進しています。

共遊玩具についてもっと詳しく知りたい方はこちら

共遊玩具

日本おもちゃ大賞2024

共遊玩具部門 優秀賞 受賞!

トミカを運転!ハンドルドライバー

トミカを運転!ハンドルドライバー

目が不自由な子どもたちも、音声による方向指示や効果音を聴きながら自分でハンドルを操作し、臨場感のある音声と共に「運転」の疑似体験や各種ゲームが楽しめます。またおもちゃで初めて、色覚の多様性に対応していることを保障する「CUD(カラーユニバーサルデザイン)認証」を取得しました。

CUDマークはNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構により、認証された印刷物、製品等に表示できるマークです。
ディズニープリンセス なんでもキラキラスキャンレジスター © Disney

ディズニープリンセス
なんでもキラキラスキャンレジスター

光に加え、音声やさわれるレリーフでもプリンセスの世界観が演出され、操作ボタンの配置や形状、紙幣と硬貨のデザイン、小物類の触感にも、視力を使わずに識別し楽しめるよう、さまざまな工夫がされています。

Interview
より多くの子どもたちが楽しめる リカちゃんから広がる笑顔の輪 より多くの子どもたちが楽しめる リカちゃんから広がる笑顔の輪

1967年の誕生以来、タカラトミーを代表するおもちゃとして愛されてきたリカちゃんは、目が不自由な子どもたちも、触覚や音などで楽しく遊べるたくさんの工夫が盛り込まれています。そんなリカちゃんの共遊玩具としての一面に焦点を当てて、リカちゃん事業部の平林さんと杉森さんにインタビューしました。商品に隠されている工夫の数々や、ユニバーサルデザインの発想で進化するリカちゃんのこれからについて聞きました。

平林奈々
リカちゃん事業部 企画開発課

平林奈々

1999年入社。キッズコスメやキャラクター玩具の企画開発に従事。2018年から念願のリカちゃん事業部のメンバーになり、リカちゃんのハウスや家具、ドレスなどを企画開発している。また企業とのコラボを検討し、商品化している。

杉森智子
リカちゃん事業部 企画開発課

杉森智子

1994年入社。技術部門でドールの顔の成型や絵付けに携わったのち、アニメ等のキャラクター玩具の版権監修や企画開発を経験。2018年から在籍するリカちゃん事業部では、リカちゃんのお洋服や顔のデザインを主に担当している。平林さんが「職人」と評する画力は美術短大時代に培ったものだそう。

リカちゃん史上初の
共遊玩具は?

誕生から60年近くが経つリカちゃんですが、現在のラインナップには「共遊玩具」に認定されている商品がたくさんありますね。

平林

もともとリカちゃんは、目が不自由な子どもたちにもよく遊ばれているおもちゃでした。ドールそのものはもちろん、お洋服やハウスに付属するミニチュアの日用品など、どれも触覚で形を認識しながら遊ぶことができるからです。でもリカちゃんが共遊玩具として認定されるまでには紆余曲折がありました。

杉森

かつてリカちゃんには「目がプリントで表現されているので共遊玩具にふさわしくない」という意見もあったそうなんです。リカちゃんの目はかわいらしさを追求して、表面が平坦で黒目が大きい少女漫画的なデザインになっているのですが、これだと触っただけでは目が判別しづらいと。

平林

しかし、「障害がある子どもにとっても、現実世界を疑似体験できるリカちゃん遊びは教育的に有益である」といった専門家の意見もあり、関係者による検討の結果、正式に共遊玩具として認定されるようになりました。こうして2008年発売の「ドール・ドレスシリーズ」を皮切りに、今ではキャラクターコラボ商品など一部を除いて、リカちゃんシリーズのほぼすべてのアイテムが共遊玩具に認定されています。

杉森

でも実はそれ以前にももうひとつだけ、共遊玩具に認定された商品があるんです。それが1998年に発売された「もしもしリカちゃん おしゃべりしましょ!」という商品です。

平林

聴覚だけでも楽しめる点と、「携帯電話」という当時最先端のアイテムをモチーフにした話題性もあって共遊玩具に認定されたのだと思います。

携帯電話のボタンを押すと1080通りもの音声でリカちゃんがおしゃべりしてくれるという「もしもしリカちゃん おしゃべりしましょ!」。
1998年に4,980円で発売され話題を呼びました。

細かな工夫で遊びやすく、
扱いやすく

では目が不自由な子どもたちも扱いやすくするための工夫や配慮について、
実際の商品を例に教えてください。

平林

リカちゃんシリーズ共通サイズの凸と凹で小物類を固定できる工夫をしています。2023年に発売したリカちゃんハウスシリーズ「リカちゃん ブランコとすべりだいのある ラ・メゾン」でも導入しているのが、天板に凹みをつけて底に凸の付いた食器などをはめ込めるようにしたダイニングテーブルです。凸と凹で小物類を固定することで、遊んでいるうちに食器を落としてしまったり、どこかに失くしてしまうといったことを防ぐことができます。

平林

ラ・メゾンの購入者アンケートによれば、子どもたちがよくダイニングテーブルで遊んでいるという回答が多く寄せられています。凹みに何かをはめ込むこと自体を面白いと感じてくれるお子さんが多いのかもしれません。

食器の底に凸がついており、天板の凹みにはめ込むことでテーブルに固定。

杉森

あとバスルームにあるシャンプーとリンスには、シャンプーのボトルにのみきざみ加工を入れてあるんです。

平林

実はこれ、「洗髪中に目を閉じたままでもシャンプーとリンスの区別がつくように」と本物のシャンプーボトルにも施されている加工なんです。牛乳パックの上部にも小さな切り欠きを入れているのですが、これも本物と同様の加工。牛乳と他の飲み物のパッケージを触覚でも区別できるように、実際に施されているものなんです。

現実世界のユニバーサルデザインが、そのままリカちゃんの世界でも採用されているわけですね。

シャンプーボトル(写真手前)にだけ側面にギザギザのきざみ加工が。こんなわずかな凹凸も、遊びの可能性を広げるために役立っているのです。

杉森

ほかにもリカちゃんのペットたちが暮らす「リカちゃん わんにゃんシェアハウス」は、付属するフードサーバーのレバーに正しい回転方向が分かるギザギザ加工を施しています。姿形がそっくりなドールに関しても、ふたごの「ミキちゃん」「マキちゃん」は前髪の分け目、みつごの「かこちゃん」「げんくん」「みくちゃん」は帽子の耳にアレンジを加えて、それぞれを触覚でも識別できるようにしているんですよ。

子どもたちからの人気が高いというフードサーバー。レバーにギザギザを入れるというちょっとした工夫で、より多くの子どもたちが扱いやすいおもちゃに。

リカちゃんの妹はふたごとみつご。それぞれフォルムとサイズがそっくりです。ふたごの「マキちゃん」「ミキちゃん」は髪の分け目、みつごの「かこちゃん」「みくちゃん」「げんくん」は帽子の耳が識別のポイント。

ユニバーサルデザインが
リカちゃんにもたらすもの

おふたりはUDリーダーワークショップにも参加されているそうですが、
受講してみた印象を教えてください。※詳しくはページ下部のコラムをご覧ください

杉森

あらためてユニバーサルデザインについて学んでみて、障害の種類が非常に多岐にわたることに驚きました。これまでは主に視覚障害のある子どもたちに向けた共遊玩具を作ってきましたが、このワークショップのおかげでより多様な視点を持てるようになったと思います。

平林

障害によって直面する困難はさまざまなので、すべての子どもたちが満足できる商品を生み出すというのは難しいかもしれません。それでも、満足に遊べずにガッカリするお子さんをひとりでも減らしたいという想いはさらに強くなりました。

ワークショップで学ばれたことは、開発中の商品にも活かされているのでしょうか。

杉森

今後発売予定の商品にはユニバーサルデザインに配慮した新しい工夫をさらに盛り込むつもりです。またワークショップで、お洋服の着せ替えを片手のみで行うという体験をしたのですが、そこで感じた不便や新たな気づきをもとに、より着せ替えのしやすいドレスの研究もはじめようとしています。

平林

私は今、新しいリカちゃんのお家を開発中なのですが、たとえば床面にエンボス加工等を施しテクスチャーの違いを出したり、玄関扉の開閉時に音を流すなど、これまで以上に触覚や聴覚でも楽しんでもらえる要素を入れようと考えています。次回のワークショップではその試作品を持参し、参加者からユニバーサルデザインの観点で忌憚なきフィードバックをいただき、より良い商品に繋げていきたいです。

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ONE TOMYでユニバーサルデザインを推進!

01より多くの子どもたちに楽しんでもらえる商品作りは「社内の風土作り」から

タカラトミーでは、ユニバーサルデザインを積極的に学び、そこで得た知見やスキルをアソビの開発に生かす「UDリーダー」の育成を2022年から始めました。
今年度、各部署から集まった20名が、講義や商品のユニバーサルデザイン視点に立った改善といったワークショップに参加し、「UDコーディネーター」の資格取得を目標とします。
ワークショップに参加したメンバーは学んだ知識を各部署に持ち帰って共有・活用し、より多くの子どもたちに楽しんでもらえる商品とサービス作りを目指していきます。

実際のUDリーダー研修の様子。まずは講義でさまざまな障害に関する知識やユニバーサルデザインの基礎を学んでいきます。
全員で見えづらくなる眼鏡をかけておもちゃを操作したり、触覚のみで文字を判読したりと、障害がある状態を体感的に理解するためのカリキュラムも。

01「小さな凸」をすべての電子玩具に!

電源スイッチのON側に付いた凸。電池蓋のネジ穴を囲むようなリング状の凸。これらは子どもたちのためにおもちゃの操作や電池の交換をしたいと願う目が不自由な大人たちや、おもちゃが好きなすべての目の不自由な人たちが「電源のON/OFFのスイッチの状態」や「電池カバーを開くためのネジ穴」を簡単に把握できるように設けられた工夫です。
実はこの工夫、以前は「共遊玩具」にのみ採用されていました。しかし2023年度からはタカラトミー、さらに2024年度からは国内外のタカラトミーグループすべての電子玩具に適用することを決定しました。おもちゃの形状の都合で「凸表示」が入れられないものについてはその旨申請しないと開発プロセスが進められない仕組みを作り、一つでも多くのおもちゃに「凸表示」ができるよう努めます。目が不自由な人も、もっと安心しておもちゃを楽しめるように。小さな凸はそのための大きな一歩になるはずです。

ON側に小さな凸をつけると、どちらがONか、触ってわかる工夫。
電池カバーを開くためのネジ穴を簡単に把握できるように設けられた工夫。