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発売日 | 2022年7月下旬発売 |
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メーカー希望小売価格 | 4,400円(税込) |
対象年齢 | 6歳以上 |
「ゾイドワイルド
ゼノレックス・ストームXAは、ゼノエヴォリューションアームズ、
サイコジェノスピノは走る。向かうは未だゼログライジスが沈黙したまま空を仰ぐ旧市街地。この場所に高濃度で溜まるゾイド因子を補給することで回復とさらなる進化を狙うのがランド博士の狙いだった。
「奴の脚が速くなくて助かったぜ……」
ジェノスピノの足跡を追うブレイズはその姿を視界にとらえた。ゼログライジスへと向かい走る姿を。
どうやらエヴォブラストによって裂けた胸部はまだ回復していない。装甲が回復する前に今ほぼむき出しになっているコアに強力なダメージを与えなくてはならない
「ライガーでもう一度エヴォブラストを掛けるか?」
この満身創痍の機体で十分な一撃を加えることができるのか? すぐにでも手を打たなければジェノスピノが回復してしまう! しかし……。
衝動的に一か八かの攻撃を試したくなるのをこらえてブレイズは本部へ呼びかけた。
「本部へ…この状態なら直接ヤツのコアを貫けるハズだ。傷はじきに塞がるだろう。次の攻撃は失敗が許されない…強力で精密な射撃が必要だ…」
「こちら本部。クエイド中佐。了解した。我々にはまだ手がある! 注視を続け指示を待て!」
「すまない…ゼノレックス……」
リュークは横たわるゼノレックスをさすり呼びかける。その傍らには背中にオレンジ色のタンクを積んだ青いライオン種の姿があった。
マンジェル大尉の駆るレジェンドブルーが補給と応急回復処置を可能とする新型の「バイタルチャージャー」を運び、死闘の末、地に伏したゼノレックスの救援に駆けつけていたのだ。
「すまないリューク大尉、俺は回収班ではない。君とゼノレックスをもう一度戦いに送り出すためにきたんだ……」
バイタルチャージャーのエネルギーを直接ゾイドコアに注ぎ込むホースを抱えながらマンジェル大尉は言った
「気にしないでくれ。相棒として上手く扱ってやれなかった俺の落ち度だ。このままおとなしく引き下がれるようなゾイドじゃない。回復すれば俺が止めても再び戦うだろう…」
エネルギーの注入が進むにつれて、ゾイドコアの脈動が元の太さを取り戻していくのがわかる。
「さすが地球外ゾイド…バイタル値が急激に回復していく……」
バイタルチャージャーからのエネルギーの急激な補給によってゼノレックスの目に光がともる。
「ゼノレックス…無理をさせてすまない……」
リューク大尉はゼノレックスへ呼びかける。
「ヴォルルルル…」
ゼノレックスが返事をするかの如く喉を震わせ立ち上がった。そして頭を低く構えて操縦席のキャノピーを自ら開いてみせた。
「やってくれるか…ゼノレックス!」
「リューク大尉、雲行きがが怪しい……ポイント・ブラッドロックに向かってくれ。」
マンジェル大尉がレジェンドブルーのシートへ乗り込みながら言う。
「ブラッドロック…崖の先じゃないか…サイコジェノの足跡とも真逆…」
「どのみちゼノレックスの脚では追いつけない。細かい説明は後だ。とにかく指定のポイントへ向かってくれ!」
「…わかった。行くぞ! ゼノレックス!」
「ヴォウ!」
ゼノレックスの脚が大地を蹴った。さっきまで地に伏していたとは思えない恐ろしい回復力。そのポテンシャルに驚かされるのと同時に、ジェノスピノも回復している可能性が頭をよぎった。時間が無い。そんな中、今自分は何をさせられようとしているのか? 崖に登って何をしろというのか…今はマンジェル大尉の言葉を信じるしかない。
「さぁ、俺ももう一仕事いくとするか…バーニングライガー隊、応答せよ!」
マンジェル大尉の駆るレジェンドブルーが空になったバイタルチャージャーを投棄すると颯爽と走り出した。
ポイント・ブラッドロック。普段なら見晴らしのいい崖であるはずなのだが、いまは立ち込めた暗雲だけが広がっていた。
「一体ここで何をしろというんだ?」
リューク大尉が意図を掴めず暗雲を見下ろしていると、背後から巨大なエンジン音が聞こえてくる。なんだ? 振り返ると共和国母艦の姿が見えた。
「こちらクエイド中佐。ゼノレックスの所在を確認。」
「中佐!」
ゼノエヴォリューション照射装置がこちらへ向くのが見えた。
「ゼノエヴォリューションアームズ ストームユニット照射!」
母艦から光が伸びる。その照射された光がゼノレックスを包み込む。ゼノエヴォリューションが発動する。ゼノレックスの肢体がみるみると進化していく…
「ストームユニット?」
「そうだ。平和協調の証として帝国に寄贈したライジングライガーパンツァー。その返礼として帝国から贈られたのがスナイプテラ由来の最高機密であるZフライト技術…」
ゼノレックスの全身が銀色に変化し背中に翼が生えていく……
「共和国と帝国の技術の粋を併せた究極の姿……」
リューク大尉がコンソールの文字を読み上げ状況を知らせる
「XAモード!ゼノレックス・ストームXA!」
今、ゼノレックス・ストームXAが最後の決戦へとその銀翼を広げ飛び立った。
「本部、急いでくれ…奴の傷が塞がり始めているようだ…!」
サイコジェノスピノの露出していたコアにうろこ状の装甲が薄く膜を貼ったように覆いだしているのが見えた。
「クソ、終わりの見えない戦いがこれからも続くというのか…」
「あきらめるな!コイツを使え!」
振り向くと共和国のレジェンドブルーを先頭に見慣れない超長砲身のキャノンを2機のバーニングライガーが運んでくるのが見えた。
「マンジェル大尉! しかし、そいつを装備する間に…」
「大尉、共和国の寄贈品はとんだ食わせ物だぜ…」
右舷のバーニングライガーを駆るハンスが割って入る。
「そう、これはロングレンジバスターキャノンのもうひとつの姿……」
左舷のバーニングライガーのポーラが続ける。
「もう距離を詰めなくていい。平野だ。超長砲身型の力を見せてやってくれ! ライジングライガーでなければ扱えないシロモノだからな!」
レジェンドブルー、バーニングライガーの三機は器用に連携し、運んできた超長砲身型ロングレンジバスターキャノン強化型ライジングライガーにマウントして見せる。
「流石帝国の精鋭。作業用でもないゾイドでこんな芸当のできる部隊はそうそういないぜ」
「ヴゴヴォ…」
礼を言うようにライジングライガーパンツァーが低く唸り目に光を滲ませた。
「しかし、むき出しの胸部ゾイドコアを正面に捉えなくては…」
そう…ただでさえ視界の中で小さくなるサイコジェノスピノはあくまでも後ろ姿なのだ。
「大丈夫だ、奴は必ずこちらを向く!」
「その声はリューク大尉!? どこから?」
突然無線に割り込んできた声にブレイズが驚いた直後、雲の尾を引くミサイルがサイコジェノスピノへ飛んでいくのが見えた。
ドゴォーン! ドゴォーン!……ドドドドゴォーン
サイコジェノスピノが爆炎に包まれていく。やったか? 強力とはいえミサイル攻撃で奴を殲滅できるとは思えない…いや、違うこれは雌雄を決するための攻撃ではない。ブレイズはとっさに超長砲身型ロングレンジバスターキャノン強化型の照準を爆炎の中心部に求めた。
「小癪な人間どもよ…」
立ち込める煙の中からサイコジェノスピノが姿を現す。こちらをにらみつけるように振り返って。そう、こちらに正面を向けて!
そのサイコジェノスピノが必殺の構えで走り迫ってくる!
こちらを潰せば人類にもう対抗戦力が残っていないのを解っているかのようだ。
傷は塞がりはじめ表面には薄い膜さえ伸び始めているが見える。しかしそれでもオレンジに光り脈動するゾイドコアが透けて見える! 今だ! ブレイズは引き金を引く。
「ロングレンジバスターキャノン強化型<超長砲身射撃>!」
正面の視界は光に覆われ、ライジングライガーパンツァーの足元が反動で地面にめり込んでいく。
「これで決まってくれ…頼む……」
ホワイトアウトしていた視界が回復する。射撃の爆音が引き周囲の音も聞こえ始める…足音が聞こえる。誰の?
「ゾイド因子を取り込んだサイコジェノスピノを舐めてもらっては困るよ、諸君…」
足跡の主が…ランド博士がわななくように言う。
「クソ、もうなす術が…」
クエイドの張り詰めた緊張の糸はもう切れる寸前だった。
風を切り裂くように鋭い、それでいて激しい嵐のような轟音が空に響く。
グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ……
銀色の翼が後ろから通り過ぎた。
ゼノレックス・ストームXAが撃ち乱れながら真っすぐに、サイコジェノスピノに突っ込んでいく
「リューク大尉!?」
「キャノンの砲撃が残した気圧の低い軌跡、空気の抵抗がない軌跡…この速度ならいける!」
「アサルトエクスストーム!」
銀色の体が放電された雷に包まれるようにして輝き、地面すれすれをサイコジェノスピノのコアに向かって真っすぐ加速していく…。
サイコジェノスピノの体が真っ二つに裂けるのが見えた。
「くそぉおおお、完全生命たるワタシがぁあああああ」
ゼノレックス・ストームXAの口にはゾイドコアが咥えられている
「リューク大尉…そんな戦い方ができるのか…!」
ブレイズ大尉がつぶやく
「1人の戦い方なんかじゃない。共和国の…帝国の…いや、これは<人類の戦い方>だよ」
クエイド中佐が落ち着いた口調で応える。
「やれっ。ゼノレックス…」
ゼノレックス・ストームXAが咥えていたコアを噛みつぶす。人類を恐怖に陥れた存在の核といえるそれはあっけなくつぶれた。火山の噴火のように赤い雫が散った。
「終わったのか…」
雲が割れて陽の光が差し込む。
開けた空に銀翼がひとつ緩やかに滑空する
その下をライガーが走る…
廃墟に佇むゼログライジスがその息を吹き返すことも無い。
……地球はようやく平和を手に入れた
(完)