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発売日 | 2022年5月下旬発売 |
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メーカー希望小売価格 | 5,500円(税込) |
対象年齢 | 6歳以上 |
「ゾイドワイルド
ライジングライガーパンツァーは、
またロングレンジパスターキャノン
「ロングレンジバスターキャノン
ライオン
夜明けの荒野に目の眩むような光の花が咲き乱れる。
サイコジェノスピノの回転刃がバーニングライガーを斬りつけている。ゼノレックスを守るため、ブレイズ大尉は愛機バーニングライガーで盾になった。サイコジェノスピノを葬るためにはリューク大尉のゼノレックスバスターの火力が必要だった。
「リューク大尉、俺ごと吹き飛ばせ! 全弾ゼロ距離斉射だ!」
「バカを言うな!」
そんな事をすれば、彼もバーニングライガーもただで済むはずがない。だが奴を倒すにはそれしか方法がない事もまた事実。躊躇している暇はない、だが、しかし…
ドドドドドドガゥゥウウウウン!
サイコジェノスピノが爆発の炎に包まれ倒れる。一方でブレイズ大尉とリューク大尉二人のゾイドは爆風に吹き飛ばされサイコジェノスピノから間合いを取ることができた。大火力かつ恐ろしく精密な砲撃だ。
「何奴…? 一体どこから攻撃した?!」
突然の攻撃に状況を掴めないランド博士…もといRサイコシステム。
「聞こ…るか? こちらクエイド中佐。ブレイズ大尉、後退命令だ。ポイント“シーマッド”で合流せよ。こちらには…ザ…ズザザ…」
雑音交じりの無線で命令が下される。状況を掴めないのはブレイズ大尉も同じだった。後退命令? リューク大尉を見捨てろというのか?
「行くんだブレイズ! もう大丈夫だ。ここからは俺に任せてくれ!」
「バカを言うな! リューク大尉」
「傷だらけのバーニングライガーで何ができるというんだ。中佐に考えがあるハズだ。俺はそれに託す。行ってくれブレイズ!」
薄れゆく砂塵の中でサイコジェノスピノが立ち上がるのが見えた。もう迷っている時間はない。ブレイズはスロットルを引く。
「俺は必ず戻ってくる!待っていてくれリューク大尉!」
バーニングライガーが大地を蹴り加速していく。
目標ポイント“シーマッド”。満身創痍のバーニングライガーを休ませ、ブレイズ大尉は機体を降りた。すぐに見慣れぬ緑のライオン種が横付けしてきた。
「大丈夫か? いつも足の速い君らの隊に先鋒をさせてしまって済まない。」
そう言いながらクエイド中佐が降りてきた。
「気にするな、俺たちが迂闊だった。ところでこのゾイドは?」
「ライジングライガーパンツァー。先の戦役でゼログライジスやオメガレックス、そしてジェノスピノさえも破ってみせたというライオン種だ」
「伝説のように扱われるあのライオン種か…」
「伝説であり、まぎれもない史実だ。当時共和国軍でテストしたデータが残っていてな、発掘、復元に躍起になっていたのだ。格闘性能に秀でたライオン種でありながら同時に大火力精密照準兵装をも使いこなす繊細さも併せ持つ……これをお前に託したい…」
「なぜ…! おれにはこのバーニングライ…」
ブレイズはそこまで言うと言葉を詰まらせた。辛くもここまでは来れたもののバーニングライガーはもうとても戦えるような状態ではなかった。
「俺たちは敵ではない。共闘する友だ。そもそもこのライジングライガーは平和協調の証として貴軍に寄贈される予定だった機体だ。」
「しかし…」
「お前と戦ってきた俺が言う。コイツはお前に託すべきゾイドだ」
「しかし…おっと…」
ブレイズの身がよろける。背中をこづかれた? 誰に?
ヴォウ…グルル
振り向くとバーニングライガーの鼻があった。
「バーニングライガー…お前…」
ヴォ…ヴォヴォウ…
そのやり取りに呼応するようにライジングライガーが喉をならした。
「ラプター乗りである俺よりも、ライガー乗りであるお前の方が上手く扱えるはずだ。この機体を有効に使えるかどうかが戦いの鍵になる。やってくれるな?」
クエイドはそう言うとブレイズの肩に手を置いた。口元が少し笑っているように見えた。少し間をおいてブレイズが答えた。
「…ああ、やらせてくれ…」
サイコジェノスピノがサイコジェノソーサーの回転を上げていく。これまでの戦闘がまるで遊びであったとでも言いたげに左右に振りなびかせている。
一方で大火力の応酬と急接近による刺し違えるような格闘を繰り返したリューク大尉は疲弊していた。彼の駆るゼノレックスの切り札といえるゼノエボリューション。エネルギー消費の激しいこの形態は長時間維持することが難しい。戦いが長引くほどに不利になる。
「クソ…」
サイコジェノスピノが勝ち誇ったようにアームをしならせサイコジェノソーサーを振りかぶる。
ドガッドガガガガァン!
≪く、またしても私に恥をかかせるというのか…≫
サイコジェノスピノの巨体がよろめいた。サイコジェノスピノの探知外からの強力かつ正確な砲撃…こんな芸当のできるゾイドはリュークの知る限りアイツしかいない。
「ライジングライガーパンツァー?!」
「待たせたな、リューク大尉!」
聞き覚えのある声にリュークは目を大きく見開いた。その声は、紛れもなくブレイズのものだった。
「なぜ、あんたが共和国のゾイドに……」
「クエイド中佐から受領した。平和の証たるゾイドだ」
「寄贈の噂は本当だったのか、俺たちは本当に……」
「どうやら、ゆっくりと話をしている時間はないようだ」
ライジングライガーの視界の先で、サイコジェノスピノがゆっくりと体を起こしていた。
「ゼノエボリューションに残された時間は多くない。」
「一気にかたをつけるぞ!」
言うや否やライジングライガーが地を蹴り、ゼノレックスが跳ねた。同時に大地がめくれ上がる。その荒れる大地と引き換えに二体のゾイドはその重装にそぐわぬ破格の機動性を発揮する。
真っ赤に光る目が残像を引きながら、金色の目が光を取り戻しながら二手に分かれてサイコジェノスピノへと肉薄していく。
≪今更、一機増えたところで、結果は何も変わらん!≫
頭に直接響く声を振り払い、2体のゾイドは大地を踏みしめた。
ライジングライガーのロングレンジキャノンが照準を決め、ゼノレックスバスターの武装ハッチが全開放される。ブレイズとリュークの闘志が、意思がシンクロする。二人が同時に叫んだ。
「全砲門、撃てぇ!」
2体のゾイドによるゼロ距離大火力全砲一斉射。光と爆音に包まれるサイコジェノスピノ。光は白く視界を遮り、爆音は音ととらえるのも困難な有様だ。
その凄まじいまでの破壊力にサイコジェノスピノが悲鳴にも似た声を上げる。
攻撃が効いている。その事実がブレイズとライジングライガーの体に力を漲らせた。
ブレイズはロングレンジバスターキャノンをパージすると、ライジングライガーの驚異的な加速度に体中が軋ませながら次の攻撃へと移行する。すでに十分かもしれない。それでもとどめを刺すまではその攻撃の手を休めるわけにはいかない。アイツは「そういう存在」なのだということをブレイズは理解していた。
前方へとA-Zタテガミブレードが展開し、激しい光を放ち始める。
「進化解放、エヴォブラスト! ライジングバーストブレイク!!」
加速が極まっていくと同時に隠されていた長剣A-Zブレードが展開されその切先が姿を現す。
ヴォオオオオオオオオオオオオ!
ライジングライガーの雄叫びが重なる。
「喰ぅらええええええええぇえええ!」
瞬間、強い衝撃がブレイズの体に伝わった。ブレードがジェノスピノの青暗い色の装甲を突き破っていく、その切り口から光が漏れだすのが見える。確かな手ごたえを感じたブレイズはさらに力いっぱいスロットルを押す。ライジングライガーもそれに応えた。漏れ出す光が…いや、もう溢れ出すようになった光が彼らを飲み込んでいく……
網膜を焼く程の光が収まり、ブレイズはようやく状況を確認する。
サイコジェノスピノの姿はなく、どこかへと続く足跡だけが残されていた。
ふと背後を見ると、そこにはゼノエボリューションが解除されたゼノレックスが無言で横たわっていた。
ブレイズは背筋に冷たいものを感じながら、必死に彼の名を呼び続ける。
「リューク大尉! 応答せよ、リューク大尉!」
「……大丈夫だ、なんとか生きてる」
ダメージが蓄積していたサイコジェノスピノの一撃は、狙いを僅かに外し、そのおかげでリュークは一命を取り留めていたのだった。
「すぐに奴を追ってくれ、もしこのまま完全に見失えば、どれ程の被害が出るか分からん……」
リュークの言葉にブレイズは静かに頷いた。
仲間を失い、愛機を失い、そして今、頼れる男も地に伏せてしまった。
武装もほとんど撃ち尽くし、体は痛みのない場所を探す方が難しいくらいの有様だ。
それでも、この任務は自分にしか出来ない事なのだと、彼ははっきりと認識していた。
「任せてくれ。俺がサイコジェノスピノを止める……」
(次回へ続く)