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発売日 | 2022年3月中旬発売 |
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メーカー希望小売価格 | 9,350円(税込) |
対象年齢 | 6歳以上 |
「ゾイドワイルド
ゾイドワイルド
サイコジェノスピノは、
さらに、ランド
共和国と帝国が協力し、突如現れたゼログライジスを鎮圧した戦いから約2か月が経過していた。戦争は終結し、かつてなく両国の協力関係が築かれ、二度とゾイドが戦争兵器として利用されることはないと思い始める人も現れていた。
帝国軍パラド基地、ランドバリー実験室。戦争の終結と共に閉鎖されたはずのこの実験室に、二つの人影があった。
「これが培養に成功したゼログライジスの因子です。」
「いよいよだな。我々、真帝国が待ち望んだゾイドが誕生する。」
「また失敗する恐れもありますから、過度な期待は禁物です。」
石化しているスピノサウルス種のゾイドに紫色の液体が注入されていく。
「ゼログライジスのことか…?あれは不完全な機体だった。今回は『彼』のデータもある。」
——≪Rサイコシステム、起動≫——
「フッ…。フハハッ!!真帝国は今、蘇った…!!このサイコジェノスピノと共にな!」
「目標は旧ランドバリー研究室の方角から北上中。おそらく帝国首都に向かっていると思われる。逐一解析データを上げていくので目を通してくれ。」
「了解。どうやら戦争は終わっても俺たちの仕事はまだしばらく続きそうだな」
ブレイズ大尉を先頭に3機のバーニングライガーが光の筋を発した先に向かって走りだす。
「解析データ入ります…『ゼログライジスの遺伝子構造と似ている』ですって…どういうことなの?」
データに目を通したポーラが動揺気味に言う。それもそのはず、白兵戦となればツインパイルバンカーを装備した彼女の機体が主力となる布陣だからだ。
「しかもライダーの姿が確認できない。どういうことだ?」
ハンスもそのデータに目を疑った。彼の機体は3機中最も離れた位置から攻撃できるインパクトガトリング装備。最初の攻撃はライダーへの威嚇の意味もある。相手が無人では駆け引きも何もあったものではない。
「まるでまたゼログライシスと戦うようじゃないか…」
「落ち着け! ポーラ! ハンス! もう戦闘レンジに入るぞ!」
ブレイズ大尉がそう遮った時、すでに敵の影が目視できる距離に入っていた。
「大丈夫、心得ています! インパクトガトリング!」
ハンスが発砲をはじめる。地球外ゾイド因子をもったバーニングライガーだからこそ使える強力なコアドライブ兵装。過去のゼログライジスとの会敵でも効果を確認できた数少ない武器のひとつである。
ドガガガガガガガガ!
目標に着弾。その姿はガトリングの着弾によって上がる煙に覆われていく。それほど大きいわけではないのかもしれない。無論「ゼログライジスと比べれば」の話ではあるが…
その硝煙と巻き上がった砂埃をかき分けるようにして目標が姿を現した。突進を続けたバーニングライガー小隊にはもう、陰ではなくはっきりとした姿形が見えるようになっていた。
「なん…だと…」
現れたのは帝国軍人ならよく知る存在。かつての戦役における帝国の最強ゾイドとしてその使用が厳格な基準で制限されている存在。
「ジェノスピノだと?」
「ゼログライジスと比べれば体躯も小さい! やれるハズよ!」
「ポーラ、援護する!」
一直線に飛び込んでいくポーラに並走しながらハンスが弾幕を展開する
「まて、あせるな!」
ブレイズの呼びかけは間に合わない。
ヴォァヲオオオオオ!
金切音に低い震えが加わった形容しがたい咆哮が響き渡る
ポーラとハンスが…2機のバーニングライガーが蹂躙されている。一機は踏みにじられ、一機は脚を咥えられもてあそぶようにゆすられている…間合いを詰めたほんの一瞬の間にだ……
「コアドライブウェポンが効いていないだと? 本当に地球製ゾイドなのか?」
ブレイズはその戦闘力に動揺する。同時にこのジェノスピノが何者なのか? 何を目的にしているのか…思案を巡らす。
≪我々は真帝国。史上最強のゾイド、サイコジェノスピノを擁する、絶対的な力によってこの星の覇権を制する唯一無二の国家だ。軟弱な和平に屈した帝国に宣戦布告する。≫
戦場の喧騒のなかでもはっきりと聞こえる。無線ではない。頭に直接響いてくる。テレパス? 自分個人に宛てられているものではない。明らかに不特定多数に対してなされた演説。共和国軍にも聞こえているだろう。
真帝国を名乗ってはいるがどれだけの勢力がいるのかわからない。だが、その内容からは目の前にいるゾイドがサイコジェノスピノであり、宣戦布告し帝国に敗北を認めさせるだけの力を持っているのだという自信が読みとれた。
「クソ…戦争は終わってもゼログライジスの呪縛は解けないというのか……」
こうしている間も調査班からの解析データは上がり続ける。ゼログライジス因子を使い人為進化させられた個体だということ。今後ゼログライジスに準じた成長を続けていくだろうということ。おそらくまたこの星全体をこの星のすべてを浸食する存在になるだろうということ。
「こいつは…ゼログライジスの復活と同義だというのか……」
共和国軍と全面共闘してようやく抑えたゼログライジス。それを今度は自分たち帝国軍だけで相手にしなければならない。そしてその切り札であるはずの自分たちコリンズ隊は…バーニングライガー小隊は…もう自分1機まで追い込まれているのである。
真帝国の奴らが「帝国へ宣戦布告」したことの真意。少なくとも自国民の安全のためにしばらくは傍観を決め込むだろう。決して責めることはできない。
恐怖に足がすくむ。心が折れそうだ…
ドドドドドドド!
まばゆい閃光と轟音。サイコジェノスピノに立て続けに、正確に横腹に命中し続ける射撃。サイコジェノスピノの体躯がよろめくのが見えた
「待たせたな! ゼノエボリューションの発動に手間取っていた、すまない…ッ!」
共和国のゼノレックスバスターXAが到着した。
「帝国の敵は共和国の敵でもある。共和国軍は協力を惜しまない!」
「リューク中尉!」
言葉にならない想いがこみ上げる。つまらないことで勝手に悩んでいた自分がバカらしくなった。
「バスター全弾斉射後にとどめの一撃を頼む!」
「了解だ!」
そう答えた直後、目に映るサイコジェノスピノの異様な姿に大尉は息をのんだ。
≪私はフランク・ランド。どうだ…?Rサイコシステムの力は。私の思念を制御中枢に宿したシステム…私は超越したのだ!!!人間さえも…、ゾイドさえも!!≫
思念?今度のテレパスは今戦っている自分に語りかけてきている。共に戦っているリューク大尉にも聞こえているだろうか?
「コイツは危険だ…危険すぎる…」
聞き知った帝国最強ゾイドのそれとは明らかに違う。望外の援軍に浮足立っていてはダメだ。Rサイコシステムの醸す殺気にブレイズは気圧されまいと歯を食いしばった。
「ブレイズ大尉、大丈夫か?」
リューク中尉がブレイズの異変に気づく
「俺にかまっている場合じゃ……リューク!!危ないっ!!」
回転するサイコジェノソーザーがしなるような動きで振り下ろされるのが見えた。
「しまった!」
激烈な斬撃音、まばゆい火花がリューク目の前を覆う。
「ブレイズ大尉!?」
目を開けたリュークの前で、ブレイズの機体が切り刻まれていた。同時に、コンソールに吐血が散らばる音が聞こえた。
ブレイズは振り絞った声で叫んだ。
「リューク大尉、俺ごと吹き飛ばせ! 全弾ゼロ距離斉射だ!」
「バカをいうな!」
サイコジェノソーザーの回転がさらに上がる。回転する刃はバーニングライガーを薙ぎ払うようにして脇腹をかすめ、そのままリュークの乗るゼノレックスバスターXAの喉に達していた。
まだ薄暗い夜明けの空に轟音が響いた。
一方そのころ共和国軍リバドット基地───────
ハッチが開き、カタパルトが明け始めた陽の光に満たされる。
「まさか、帝国に寄贈予定のこのゾイドで出撃することになるとはな…。」
カタパルトに機体の脚が掛かり、腰を落とした射出姿勢に構える。レールに沿って並んだライトが外へ向かって光をつないでいく。
「ヴェルタ―・クエイド中佐。発進準備完了!!」
(次回へ続く)