【第4話 後半】
WHY?:興味
――ドカン! ドカン!
引き続き、みこみこに言われるがままに辺りのDIVAを倒し続けているタマ。
自分の仲間達をはじめ、すでに多数のDIVAと戦っていた。仲間を倒すことに心が痛まないわけではなかったが、だからと言って足を止めるわけにはいかない。
必要なことならば、それも我慢する――しかしその痛みを無理やり我慢することが、より一層タマの心を暗く、深く堕としていくのだった。
次のバトル相手はどこか――もはや負けを恐れてバトルを望まないような相手にも、みこみこがどんどん仕掛けていっている。
果敢にも全力で向かってくる者、いやいやながらバトルする者、傷つく前に自ら負けを宣言して去る者……様々なDIVAがいた。そしてどんなスタンスのDIVAでも、結局はタマが一瞬で豪快に倒すのを見ては、楽しそうに笑っている。
しかし、それでもみこみこはいっこうにタマをアンノウンの元に連れて行ってはくれない。アンノウンを見つけるためではなく、誰かを負かすこと自体を楽しむためにバトルをさせているように思える。
そしてふた言目には報酬の話をするのだ。
そんなみこみこに、さすがのタマも違和感を覚え始めていた。
「タマ、あとどれくらいばとるすればいいの……?」
バトル中は無心で戦うタマだったが、終わると途端に虚無感に襲われる。そうするとよりみこみこへの疑念に心が支配されるのだった。
「そりゃあ、全てのDIVAを倒すまでよ!そうすればライバルがいなくなるも同然……!」
「……それって、『ほうしゅう』のため?」
「え?あー……そ、そんなことはないわよ?もちろんあなたをアンノウンに会わせてあげるためで……」
目を泳がせているみこみこを、タマはじっと見据える。
「ほんとうにいるところ、知ってるの?」
「も、もちろん……!」
みこみこはタマを納得させ、このまま従わせるために説得力のある言い訳をしなくてはいけない。
さすがに今アンノウンのところに連れて行けと言われても無理だ。何とか時間を引き延ばして、誤魔化す方法はないか――?
「そもそも、DIVAをたくさん倒すと向こうから現れるっていう噂が……」
「さっきはいるところを知ってるって言った」
「し、知ってるっていうか、心当たりがあるって言っただけで……」
詰め寄られれば詰め寄られるほど、ぼろが出る。
みこみこはタマに自分を疑う視線を向けられ、思わず目を逸らしてしまった。
さすがにこんな強い相手に敵意を向けられるのはまずい。
今まで戦った相手から奪ったディソナシグニを取られるのも避けたい。
このまま素直に何も知らないことを白状したら、許してくれるということはないだろうか……?
そうしたほうがまだマシなのではないか……?
「実は……」
そう思い、真実を切り出そうとした時、背後で何かの気配がした。
みこみこより早く、タマが反応を示す。
「るうっ……!」
現れたのはアンノウンだった。
「ほ、ほら……!言った通りでしょ!?」
ちょうど良いタイミングでアンノウンが現れ、内心ほっとするみこみこ。
しかし、そんなみこみこをよそに、タマはアンノウンに駆け寄ろうとした。
――「ふたつのエリアを融合させたのはタマのためだよ」
アンノウンは無表情でそう呟いた。
「……え?」
不意を突かれたタマは、思わず足を止める。
「る、るう……どういうこと?タマのためって……?」
タマがそう聞き返しても、アンノウンは何も答えない。
WIXOSS LANDがこんな状況になっているのは、タマのためにアンノウンがしたことなのだとでも言うのだろうか?
アンノウンが何を考えているのか、何が言いたいのか、何も分からない。
るう子の姿をしているのに、そこから感じるものはるう子と全く違う。
なのにも関わらず、どうしてアンノウンはるう子の姿をしていて、そしてどうして自分のためなどど言うのか……。
タマは余計に混乱をしてしまうのだった。
「わ、訳がわからないよ、るう……。とにかく、タマと一緒に……」
分からないことを解明させるためにも、その手を取ろうとするタマ。
しかし、突然タマとアンノウンの間に割って入る者がいた。
「ちょっと失礼致しますわ」
――ナナシだった。
タマが差し出した手はアンノウンに届かず、虚しくナナシに押し返される。
そしてその隙に、アンノウンはどこかに逃げてしまった。
「る、るう……!」
追いかけたくても、ナナシに邪魔をされて動けないタマ。
思わず、ナナシを睨みつけた。
「……どうしてタマのじゃまをするの?」
もう少しでアンノウンとちゃんと話ができそうだった、一緒に来てもらえればひどい目にあわせずに済んだのに――そう思うとタマは悔しくてたまらない。
しかしナナシは、そんなタマとは違って飄々としている。
「あら、別に邪魔をしたつもりはございませんが?」
そう言いながらタマから離れると、その隣にリメンバもやって来た。
「ただタマさんと話したくなかっただけじゃないですかー?」
かわいそうですね、と同情するフリをしながら笑っている。
「ナナシが来なければ、るうはタマと一緒に来れた……!」
「あら、そうでしょうか?別にあなたと一緒に行きたくはなさそうでしたけど……」
「そんなことないっ!」
「タマさんも、アンノウンさんと遊びたかったんですね……!わたしも清衣ちゃんと遊ぶためには一生懸命になってしまいますから、気持ちはとても分かります!」
タマはナナシから、隣にいるリメンバに視線を移して同じように怒りを込めた。その瞳の力に思わずリメンバは萎縮する。
「あ、あら……失礼しました」
ナナシは相変わらずあっけらかんとしていて、その態度がより一層タマを苛立たせるのだった。
そんな3人の様子を見ているみこみこ。
ついさきほどまでタマに詰め寄られそうになっていたところに、タイミング良くアンノウンが現れ、さらには他にタマの怒りを受けてくれる人物が出て来てくれた。
「だ、誰だか知らないけど助かったわ」
今のうちに逃げるのが勝ち……ついでにアンノウンを追いかけて捕まえれば、そのままクエスト成功だ。
そう思い、一目散でこの場から逃げ去るのだった。
そしてその場には、一触即発な雰囲気のタマ、ナナシとリメンバの3人が残った――。