【第2話】
不撓不屈の絶対的ヒロイン☆
「はい、どうぞ。最近ボクが気に入っているお菓子だよ」
――タマゴ博士は、きゅるきゅる~ん☆の3人……みこみこ、まほまほ、ゆかゆかを自分の研究室に招き、秘蔵のお菓子を取り出した。
「……どういう風の吹き回しなのかしらね」
突然タマゴ博士に呼び出され、みこみこ達は何を言われるのかとそれなりに覚悟をしていた。そうならざるを得ない程度のことを、今までしてきたという自覚はある。
なのに何故かおやつタイムが始まったのだ。
「まぁまぁ、そう警戒しなくてもいいのだよ。今日呼び出したのはお説教をするためじゃあ、ないんだからね」
「……ふーん。じゃあさっさと要件を話してくれる? みこみこ達だって暇じゃな……くはない……けど……」
「つまり、暇なんだね。それは良かったよ。今日は他でもない、まさに君達が最近どうしてるのか、ってことを聞きたかったのさ」
きゅるきゅる~ん☆が活動の休止を発表して以来、3人が揃ってDIVAバトルをすることはなかった。タマゴ博士はそんな状況を少し気にしていたのだと言う。
「どう、って言われても……」
「また活動はしたいとは思わないのかい?」
タマゴ博士に聞かれ、みこみこは他の二人の様子を伺う。
「まほまほは……本当は活動がしたいよ。セレクターに応援されて、バトルをして、DIVAタイムを披露して……あんな楽しい経験、DIVAじゃなくちゃできないもん……」
「あーしは……ふたりがやるって言うならやるよ。今は特にやることもなくて……暇なのは確かだし……」
みこみことしては正直、これまでランクの降格を経験したり、自分達より遅く活動を始めた後輩達に抜かされたり……その度に開き直ったような態度を取ってきたが、全く気にしてなかったわけではない。
だからこそ休止にしたのは仕方のない流れだと思っていたし、本当にここまでなのかも知れないと、諦めの気持ちがあったのは確かなのだ。
「そうは言っても、休止してから何も変わってないし、今動いたところで……」
意外にも現実的なことを言うみこみこに、タマゴ博士は内心少し驚いた。しかし、きっと噛み締める想いがあるのだろうということは、その表情から見て取れた――。
「なるほどな。3人の気持ちは分かったよ。――そこで、なんだが……」
「――?」
タマゴ博士は、数週間後に開かれるプレミアムイベントの告知を3人の前のモニターに映し出した。優勝したらDXMへの挑戦権がもらえるという注目のイベントというだけあって、みこみこ達も存在自体は把握している。
「もしこのイベントで活躍をして実力を示したら、君達にとっては前向きな、いい流れに持っていくことができるんじゃないかな?」
「そ、それは確かに……。本当に活躍できたら、トップDIVAにも近付くし、お金持ちにだってなれる可能性も……」
こうなってもまだ、みこみこのお金持ちにはなりたいという夢は消えていないらしい。
「で、でも一回休止宣言をしちゃったし、突然『復活します』だなんて、他のDIVAやセレクター達から反感買うかも……」
まほまほが心配そうに言うが、「何を今更」とタマゴ博士が一蹴する。
「まぁボク達も、別にきゅるきゅる~ん☆の全てが悪いと思っているわけではないんだよ。今まではその頑張りがちょっと……良くない方向にいってしまったけど、それはDIVAとしてのプライドや勝ちたいという想いが強いからこそだろ?」
「それは……」
「演出やプレイングだって、応援したいと思うセレクターがたくさんいたからこそ、君達はここまで来られたんだ」
――そんな風に言ってくれるなんて……自分達のことを理解してもらえたような、認めてもらえたような。しかし3人は、嬉しいながらもどう反応したらいいか分からない。
しかも、それを悟られるのは恥ずかしい……!
「ふ、ふんっ! 当然でしょう!?」
みこみこは立ち上がり、タマゴ博士に詰め寄る。
「今頃それに気が付くなんて、遅いってんのよ!」
「そーだ、そーだ! うちらは悪くない!」
「他のDIVAが甘いだけなんだから!」
みこみこに続いてまほまほとゆかゆかも調子に乗り始め、タマゴ博士は「そういうところだぞ……」とため息をつく。
「で、話を戻すとだな……」
3人を元の席に座らせてから、改めて今回の目的を切り出した。
「もし本当にやり直す気があるのなら、いい案があるから乗ってみないか――?」
後日――。
みこみこにはタマゴ博士とノヴァ、まほまほとゆかゆかにはバンという、うちゅうのはじまりときゅるきゅる~ん☆のスワップチームを組んだ。
「いい案ってこれのこと……?」
みこみこ達の怪訝そうな表情から、全く乗り気でないことが容易に読み取れる。
しかしそんなことは気にせず、タマゴ博士は話を進める。
「バンに君達のための更生プログラムを設定したんだ。それに加えてボクも直接指導することにした!」
そうすることできゅるきゅる~ん☆の性根を叩き直す計画なのだと言う。
「ドクターが特別に組んだ万全のプログラムに不可能はありません!」
新たな任務とばかりに、やる気を出しているバン。画面の中で、何故かストレッチをして準備をしている。
「これが神が指し示した、我が道ならば……」
ノヴァも左手の掌を額に当て、ポーズを決める。
「はぁ……確かにイベントに出るために、とは思ったけど………正直面倒くさ過ぎ!」
「そうだろうな」
「っていうか、どうしてみこみこ達のためにここまでするのよ?」
――タマゴ博士が自分や仲間の時間を割いてまで、きゅるきゅる~ん☆に付き合う義理などないはずだ。もちろん優しさや同情で、なんていうタイプでもないだろう。本人にとってどんな見返りがあるのか、みこみこ達には理解ができなかった。
「当然の疑問だな」
タマゴ博士はそう言うと、コホン、と咳払いをし、人差し指を立てながら説明をする。
「DIVAバトルがボクの研究対象だということは知っているよね? ボクはWIXOSSやWIXOSSLAND、そしてDIVAバトルにとても可能性を感じていて、大好きなんだよ。だからもっと盛り上げて発展させて、さらなる研究を進めたいんだ。そのためにはたくさんのDIVAにバトルをしてもらうのが一番! つまり、これは君達のためでもあるけど、何より自分のためでもあるというわけ」
「はぁ……つまり、WIXOSSバカってことね」
「まぁ、否定はできないな。で、それを知った上で、君達はどうするんだい?」
「まほまほ、ゆかゆか、どう思う?」
少し相談すると言って、みこみこ達は小声で内緒話を始める。
「今度のイベントに出るっていうのは、まほまほ的にはかなりアリな話だよ。この更生プログラムっていうのはヤダけど……」
「でもこれをやったから復活します、っていう言い訳……てか区切りには使えそうじゃない?」
「ゆかゆかの言う通りね。とりあえずこの茶番に付き合ってるフリをしておけば、あいつらも納得するだろうし。それにこのスワップチーム、情報を集めるのにも使えるかも……」
「確かに、うちゅうのはじまりのデッキ構成とか作戦とか探れば……まほまほ達、ランク戦とかであいつらに勝てちゃう!?」
「そういうこと」
「さすがみこみこ、相変わらず天才!」
「ふふふ。任せなさいって♪ そうと決まれば――」
何やら自信ありげな表情でタマゴ博士達の方に振り向く3人。
「この計画、乗ってやろうじゃない!」
すっかりいつもの調子を取り戻した様子の3人に、タマゴ博士は「そう来なくちゃ」と笑い、きゅるきゅる~ん☆の更生&活動再開計画をスタートさせるのであった。
「入場の待機列はこちらでーす」
「次回開催のイベントのフライヤーです、どうぞ~」
「……ねえ、今のってきゅるきゅる~ん☆のまほまほとゆかゆかじゃない?」
「本当だ! どうしてこんなスタッフみたいなことしてるんだろ?」
バンに設定された更生プログラムを元に、運営の手伝いをしている二人。
「はぁ……どうしてまほまほがこんな……」
「ピーッ! 気を付けて下さい、お客様の前では笑顔ですよ~!」
タマゴ博士に二人の更生を任されたバンは、笛を吹きながらハキハキと指導をしている。
「このお手伝いが終わったら、次は清掃のボランティアですからねー!」
「清掃って……マジでダルいんだけど……。こんな一円にもならないこと、やっても意味ないのに……みこみこに怒られるよ……」
ゆかゆかの言葉に、バンは再び笛を鳴らす。
「お金にならなくても、まずは人のためになるような行動をしてみるのです! 何か得るものがあるかもしれませんよ?」
「得るものって言ったって……こんなただ面倒くさいだけの……」
バンに言葉で諭されたところで、列整備やフライヤー配りという下っ端のような仕事をすることに、何かの価値があるがあるとは思えなかった。
「やっぱりやめる」、そう言おうとした時、通りすがりのセレクター達の声が聞こえて来る。
「見て、まほまほとゆかゆかじゃない?」
「こんな近くで初めて見た~、めっちゃかわいい!」
「何でこんなとこにいるんだろ?」
「最近見かけなかったけど……裏方にまわったの?」
――こんな姿をセレクターに見られるなんて。恥ずかしいやら情けないやらで、逃げてしまいたい気分だ。
「ピー! 全て配り終わらなければ残業になりますからねー!」
容赦のないバンの一声に、一刻も早くこの場から去ろうと、どんどんフライヤーを配り始める二人だった。
一方、その日の朝のみこみこ宅――。
――トゥルルルルル、トゥルルルルル、トゥルルルルル、トゥルルルルル
こんな朝早くの着信は、無視するしかない。というわけにもいかないほど、これでもかとずっとな鳴り続けている。
「……はい」
「おはよう、良い朝だね!」
「この電話のせいで全く良い朝じゃなくなったんだけど」
観念して電話に出ると、タマゴ博士からのモーニングコール。無理やりに起こされたみこみこは、もちろん機嫌がいいわけはない。
「そろそろノヴァがそっちに着くはずだ。お湯を一杯飲んだら、一緒にランニングしながら研究所に向かってくれ!」
この電話を切ったら絶対に二度寝してやる、と決意をした矢先。まさか逃れられないようにノヴァを派遣してくるとは――!
「はっ? え、走るってこと!? 本気?」
健闘を祈る、と言い、さっさと電話を切ってしまうタマゴ博士。思っていた以上に容赦がない。
「マジか……」
ベッドの上でため息をついたところで、家のチャイムが鳴るのであった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
みこみこは途中で悪態をつきながらも、何とかタマゴ博士の研究室までたどり着いた。自分だけではなく、ノヴァも机の上に体を突っ伏してのびている。
「は、博士……これは何日続ければいいのでしょうか……」
慣れない長距離のランニングをして満身創痍の二人をよそに、優雅に朝食をとっているタマゴ博士。
「そりゃあ、イベント当日まで毎日だよ。健やかな精神は健やかな身体から、だからね!」
何とか体を起こしたノヴァは、「これも定め……」とつぶやきながら、野菜たっぷりで栄養満点のタマゴ博士特製健康朝食を口に運ぶ。
――みこみこは、明日は絶対にまほまほとゆかゆかもを巻き込もうと決めた。
「このデッキにあと2枚カードを入れるとしたら?」
「このカードの性能を最大限発揮する構成は?」
タマゴ博士から怒涛の質問が飛んで来る。
「じゃあ、次。もしこの場面で、シグニがバニッシュされたらどうする?」
「え、ええっと……ちょっと待ちなさいよ。うーん、手持ちのカードは……」
「ほらほら、実際のバトルではどんどん時間が経っていくよー?」
「うう……」
WIXOSSのバトルでは、カードの知識や理解度が物を言う場面が多々ある。デッキを構成する際にも重要になる要素だ。
タマゴ博士は生活や健康からのアプローチだけでなく、WIXOSSに真正面から向き合わせることで、みこみこの更生を狙っていた。
ちゃんと学び、ちゃんとバトルすれば、十分勝ち進めていくことができる実力があるはずなのだ――。
――そして。
「さて、ボクの言う通りに1週間過ごしてもらったわけだけど……」
「もしかして、やっと終わりなの!? やった~!」
「まだだよ。最後に、ボク達うちゅうのはじまりと、君達きゅるきゅる~ん☆でDIVAバトルをする! 今日まで学んだことを活かして、本気で戦うように!」
あのうちゅうのはじまりと正面切ってバトル――。
いくらこの更生期間を経たからと言って勝てる可能性は低い。もしこれで負けたら、もっと期間延長なんてことになりかねないのではないか……?
それは何としてでも避けなければ。
はっ、とこのプログラムを受けたときに話したことを思い出したみこみこは、スマホを取り出し、急いでまほまほとゆかゆかに連絡をするのだった。
更生プログラムの最終日、場所はWIXOSSLAND。
「さぁみんな、準備はいいかい?」
「え、ああ、そうね。大丈夫よ。さっさと始めましょ」
今、うちゅうのはじまりVSきゅるきゅる~ん☆のバトルが始まろうとしている。
「博士、きゅるきゅる~ん☆の3人……どこかよそよそしく感じるのですが?」
「緊張しているんでしょうか?」
ノヴァとバンが気にしているように、タマゴ博士も3人の態度の不自然さにはひっかかりがあった。しかし、イベントのエントリー締め切りまでもう時間がなく、この時点でのきゅるきゅる~ん☆の実力を試す必要がある。どちらにしても、今回は単なる練習試合である。何か問題が起こったとしても、大事にはならないだろう――タマゴ博士はそう判断して、バトル開始を宣言した。
「よしノヴァ、いけ!」
「了解! グロウ!」
「ふふ~ん、平気平気♪」
「簡単には通させないよーん」
「うちらを甘く見ないでよねー♪」
うちゅうのはじまりの攻撃にもたじろがず、対応をするきゅるきゅる~ん☆の3人。先ほどまでの態度とは打って変わって、相当に自信がある様子だ。
「みこみこ達のターン♪ きゅる~ん!」
「ほーら、これは防げないでしょ?」
「シグニをバニッシュしちゃうよ~♪」
「これは……構成がしっかりしていますし、考えて展開しているみたいですね」
「ああ、想定以上だ」
プログラムの成果だと言えれば万々歳ではあるが、それにしても3人のあの余裕な態度が気になる。特訓をして自信がついた、というような雰囲気でもない。やはり何か企んでいる――?
「まさか……」
「あれ~もしかして、もうバレちゃった~?」
ニヤニヤと笑い出すみこみこ達。
「実は昨日~、たまたまそっちのデッキを見つけちゃったっていうかぁ」
「2チームに分かれてたおかげで、たくさん情報が知れたんだよね~♪」
自慢げに話すような内容じゃないのだが、デッキを見て対策をしていると胸を張っている。さらにみこみこがタマゴ博士とノヴァから、まほまほとゆかゆかがバンから戦い方の情報を盗み、両方を併せれば……全体の流れだって見えてくるというわけだ。
「さすがに勉強させられたこと全部が頭に入っているわけじゃないけどぉ、だいたいの予想は立てられるのよね♪」
「みこみこってば、てんさ~い♪」
「前よりパワーアップしてるんじゃなーい?」
「まったく……そんなことだろうとは思ったんだ……」
みこみこ達が心から素直に自分に従うとは思っていなかったが、情報を探られていたとは。
「確かに対戦相手の情報収集は準備として有効な手だけど、デッキを盗み見るのは感心できないよ」
「何とでも言いなさい!」
反省する様子はないみこみこ達。
「相手の出鼻をくじく戦いっていうのも、気持ちがいいわね~!」
「うんうん、気分さいっこー♪」
「最近みこみこと一緒にバトルしてなかったから、何か物足りなくって」
「嬉しいこと言ってくれるじゃない、まほまほ!」
「やっぱりこの3人が最強ってコトー!?」
「そういうことね、ゆかゆか♪」
3人は久しぶりにこのメンバーでバトルし、いつも以上にテンションが上がっている。それぞれ離れてこの更生期間を過ごしたことで、チームの絆が強まったのかもしれない。
「更生失敗……でしょうか?」
「ドクター……申し訳ありません……」
「いやいや、君達はよくやってくれたよ。実際に以前のみこみこ達では、もし事前情報があったとしても、ボク達とのバトルでここまでいい勝負はできなかっただろうしね」
「それはまぁ……」
「それに、なんだかいつも以上に楽しそうだし、想定外の副産物が生まれたのかもしれないよ」
「さぁさぁ! 今のきゅるきゅる~ん☆は怖いものナシよ!」
妙にはりきっているみこみこ達と、手の内が知られながらも真っ向勝負をするタマゴ博士達のバトルは続く――。
「はぁ。簡単に君達を心から更生させようだなんて思った自分が甘かったな」
「ほんと、あんなにダルいプログラムに付き合ってあげただけでも、感謝して欲しいぐらいよね」
やはり一筋縄ではいかない……ある意味強い3人に思わず感心してしまうタマゴ博士。
だとしても以前と何も変わらないまま、またきゅるきゅる~ん☆をDIVAバトルに放ったら、再び問題を起こすかもしれないという危険性がある。
それは本人達のためにも、WIXOSSLANDのためにもならない。
今回は結局うちゅうのはじまりに負けたものの、最終局面まではきゅるきゅる~ん☆が押していた、もう一歩で勝てそうだった。3人はその事実にご満悦の様子だが、このまま調子に乗らせておくわけにはいかない。
「これを見ておくれ」
タマゴ博士はSNS上に投稿された、セレクター達のコメントをみこみこ達に見せる。
『この間運営の手伝いをしてるのを見た、めっちゃえらい!』
『受付の場所が分からず迷っていたら案内してくれた~』
『復帰のためにカードを勉強し直してるらしいよ』
『きゅるきゅる~ん☆の好感度めちゃ上がった~』
『頑張ってるならまた応援したいなぁ!』
「みんな、君達のやってることをちゃんと見てくれているよ」
「こ、こんなの別に嬉しくなんか……」
「でも、この期間で君達の復帰にとって良い風を作れたことは事実だ。もし全く反省せずに、また今までと同じようなことを繰り返すなら……」
「今日の悪事を暴露するっていうこともできますね、博士?」
「……そういうことだね」
「うっ……!」
みこみこはまほまほとゆかゆかの顔を見る。
きゅるきゅる~ん☆が復活するためには、今回のおいしい機会を逃さない方がいいということは分かっているのだ。恐らく二人も自分と同じ気持ちのはず――。
「わ、分かったわよ。今回ズルして勝とうとしたのは謝るわ。実際にセレクター達の生の声を聞いたり、改めてWIXOSSと向き合ったりして……DIVAになった時の気持ちを思い出した。これから、悪いことはしないでちゃんと頑張るから……」
みこみこは正面切ってタマゴ博士の顔を見ることができない。こういう言葉を伝えるのは苦手なのだ。
「その、助かったわ……ありがとね」
タマゴ博士は、「ふっ」と呆れたような嬉しいような笑みを浮かべ、「どういたしまして、約束だよ」と答えた。
「博士、本当にいいのですか?」
「また口だけなんてことが……」
「まぁ、そうだとしても一旦切り札はこちらが持っているからね。少しぐらいの抑止力にはなるだろうさ」
こうしてタマゴ博士の後押しにより、きゅるきゅる~ん☆の活動は復活。WIXOSSLANDでも公表され、今回の更生計画は幕を閉じた。
「みこみこ、あんな約束して大丈夫なの?」
「ふふ。つまりは、バレなきゃいいってことでしょ♪」
「っ! さっすがみこみこ~!」
「まっかせなさ~い! 絶対的ヒロインは、何事にも屈しないのよ!」