【バトル攻略コラム】

ウィクロスアカデミー

ディーヴァグランプリ2024spring・メタゲームブレイクダウン

はじめに

今年度に入り、とうとう1回目のディーヴァグランプリが5月26日に開催されました――ひいては、夢限少女杯へたどり着くための戦いが幕を開けた、とも言うことができるでしょう。
10周年初の大会であるグランプリ。“ディーヴァグランプリ至上最大級の規模、予選は8回戦決勝最大4回戦”という部分を見るだけでも、『ウィクロス』が今、ここ数年で一番の盛り上がりを見せていることがわかるでしょう。
参加された方は最大限に楽しみ、そして全力を尽くすことができたでしょうか? 参加できなかった方は、この規模感に伴う熱気や新情報が、今後のモチベーションへと繋がっているでしょうか?

初めましての方は初めまして、そうでない方は夢限少女杯の使用デッキ解説以来。ウィクロスアカデミーにてライターを務めている「てらたか」と申します。

さて。先ほども述べたとおり、『ウィクロス』は今かなりホットなカードゲームになってます。

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アーツが登場したことでゲーム展開は一変し、フロアルールもこのたび整備され、初代5ルリグの登場によりちょっと『ウィクロス』から離れていた人々も戻ってきている。アニメから入った方にもゲーム的な方面から入った方にも嬉しい展開とくれば、この盛り上がりも納得というものです。
僕自身、関東のとあるウィクロスセレモニーに足を運べば前月の倍の参加人数になっていたり、目当てのアーツがあっという間にカードショップの在庫から消滅して驚愕したりと、最近上がりっぱなしのボルテージをじかに肌で感じているところですね。

ディーヴァグランプリ2024springはそんな状況で開催された大型大会なわけですから、当然その結果はメタゲームに大きな影響を与えるでしょう。今回の記事では、そんな大会の環境とそこで勝利したデッキについておさらいしていきます。
まだ詳細な結果を確認していない方、結果は見ているけどまだ深堀りの時間は取れていない方、あるいはもう大まかな分析は済んだけど自分以外の視点も欲しい方も。今から一緒にメタゲームを読み解いていこうではありませんか。

予選時の分布と傾向

予選時のルリグ分布は、上記ツイートの通り。
前回からばこさんの書いた注目デッキ解説記事に書かれていた内容それそのまま、緑子、ピルルク、タマという新規勢が使用率トップ3に入る形となりました。

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特筆すべきは、久しくトップTierに入れていなかった緑ルリグが使用率1位に躍り出たという点。
今までのディーヴァセレクションの傾向からすれば、ルリグ個別での人気やそれまで使ってきたデッキの傾向なども相まって、なんやかんやでタマやピルルクが使用率最上位になっていたことが多かったかと思います。それらを押しのけて約14.5%という最大使用率になったわけですから、間違いなく今までのゲームとは一味違った環境だったと言えるでしょう。

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高パワーラインとの戦いは、これまでも対白ルリグや対防衛派、あるいは対《闘争者カーニバル #T#》との対戦である程度こなしてきた方はいるかもしれません。しかし、パワー20000越えのシグニが多面展開されるようなラインとの戦いは、大多数にとってディーヴァセレクションでは初の体験となったのではないでしょうか。
《幻獣神 オサコ》がパワー25000ぐらいに、《幻獣神 サラブレッド》がパワー24000とか27000になり盤面にふてぶてしく居座る展開は、当日の会場でもあちこちで見られました。

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また、これは当日参加していて気づいたことですが、後半の大型シグニには対応できていても《全力疾走》を先手2ターン目に撃って全面パワーラインを10000以上にするプレイに対応しきれず、そこでダメージレースに差が付くという展開がそこかしこで散見されたようです。

そして、大型シグニを相手取る際、下手にリソースを使いすぎれば《讃型 緑姫》のワナによる一撃必殺が待ち構えている。『超大型シグニによるビートダウン』というこれまでの環境上位には存在しなかったタイプのデッキに対してしっかり対策が施せているかは、この大会で上位に勝ち残るためのひとつの焦点になっていたのではないかと思います。

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いったん2位のピルルクを飛ばして話をさせていただきますと、上記の対緑子意識は、《月日の巫女 タマヨリヒメ》にとってもきついメタゲームを作りあげていたような印象です。
《讃型 緑姫》にワナを使われてもいいぐらいエナを構えつつ、大型シグニに対しての意識をはっきり持つ……。そういう意識によって、エナを絞りつつちょっと大型の打点を組むようなタマを相手取った際も対応しやすい土壌が整えられていたように感じました。

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それだけが理由かどうかは分かりませんが、結果的にはただアームで染めた構築より、手札破壊や《コードハート リメンバ//メモリア》など他のさらなる妨害要素を組み込んだ構築の方が後半まで勝ち残っていたようです。
今回のグランプリのような環境が続くのであれば、タマの組み方、あるいは対タマの捉え方はこの「一緒くたに対策されないような構築」を前提に進めていくことになるのではないでしょうか。

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使用率の面では約13%で2位となったピルルク。からばこさんの記事においては「白青」と「赤青黒」の2種類が紹介されていましたが、今回の大会では特に「白青」の方が多く上位卓に残っていたようです。

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《コードアート Cヤンデリア》+《UPDATE》による多面トラッシュ送りや豊富なスペルを《ロストコード・ピルルク》の回収によって回す器用さが強みとして語られやすいアーツ軸ピルルクですが、アーツ軸ピルルクとしての強さは《コードアート Sマフォ》によって担保されているのではないかと思います。
リミット5の時点で《ドンドン・バキューム》からの《TOO BADLY》《コードアート Sマフォ》なんかで一気にゲームテンポを握りつつ、リミットが5から8にジャンプアップするので2ターン目に《コードアート Sマフォ》を多面展開していてもシームレスにLv3・3・2の盤面に繋げられる。防御を後ろにずらす場合リミット7で戦う必要があったアシスト軸と比べて、このようなLv2を多面展開した後の盤面変化のスムーズさはアーツ軸の大きな強みとなっているみたいですね。

構築としては、対緑子を考慮してか、単純なゲームスピードの向上を狙ってか、《UPDATE》を厚く採用した構築が強力だったようです。3面要求の1枚目で2面ダウンのライフバーストを踏んづけ、涙するプレイヤーも多くいたのではないでしょうか。

さて、そんな新弾組3人に続いて――

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同じく新規組である花代を押しのけ、タマゴが使用率4位に入ることとなりました。
そのほとんどが《プロフェッサー 防衛者Dr.タマゴ》、いわゆる『防衛タマゴ』であり、ここにきてようやくアシスト軸のルリグがランクイン。
2つ前の環境からずっと活躍を続ける防衛派ですが、緑子やタマに対して得意の打点形成が行いにくい《防衛者MC.LION-3rd》が一旦大きく数を減らし、防衛派を使用するプレイヤーは全体的にこちらのタマゴに流れたようでした。

前環境の覇者が次環境でも活躍するというのはメタゲーム変遷的には良く見る流れ。プレイングのノウハウもかなり蓄積されているデッキであり、大型のシグニに対してもパワーラインの関係ない除去をするか、あるいはそもそも無視してリソースを奪い取るかで対応できているようでした。

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ただ、アシスト軸とはいえアーツを入れていないわけではありません。もともとレベル1のシグニを並べても十分な耐久力を得やすい防衛派は、最大リミットが7になるというちょっとした弱点をものともせず、《セイクリッド・フォース》によってその対応力を大きく底上げすることに成功しました。
点数要求の補強にも再現性の補強にもなるこのアーツは、対策法がルリグによって異なるこの環境を泳ぎ切るための大きな原動力になったでしょう。


使用率的には5位ながらも花代はそれほど予選の後半には残っておらず、大体はここら辺のルリグが互いに対策をし合う形で、今回大会のメタゲームは形成されていました。

上位入賞のデッキについて

ベスト4に防衛タマゴが3名、単騎ピルルクが1名!
想像以上の青環境、かつ前環境王者の防衛派が引き続き覇を唱える結末となりました。

やはり一番目を引くのは、ひとつ前のディーヴァグランプリ・夢限少女杯・そして今回のディーヴァグランプリと大型大会を3連覇するに至ったhyakko選手の防衛タマゴでしょう。
ベスト4のぺお選手もグロウしないLv0ルリグ以外51枚が同じデッキであり、今大会における明確な『勝ち組』のデッキリストであったことが伺えます。

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特に《バイバイ!!ガブリエラ》の採用は秀逸。
点数要求がアタックトリガーに寄っている緑子に対して2エナの2面防御として活用でき、ピルルクの《UPDATE》に対しても強い牽制となるこのカードは、緑子・ピルルクがトップシェアとなった現環境において最も輝けるアシストルリグだったのではないでしょうか。
《羅石 レイ//THE DOOR》のおかげで《凛々!!ガブリエラ》を大外ししにくいというのもこのアシストラインの弱みを補強するエッセンスとなっています。

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2面防御アーツである《ネオバロック・ディフェンス》の採用、《セイクリッド・フォース》によるルリグバリアの獲得などのおかげで1ターンで受けるダメージ量を誘導しやすくなっており、《●TAP DOWN TAP●》が撃ちやすくなっているのも見逃せないポイントでしょう。
メタ読み・対応力の確保・防御力、隅々までバッチリ嵌るように構築されているのがわかり、今後の環境でもこの構築が活躍していくのは想像に難くありません。

優勝とベスト4が同一デッキリストの防衛タマゴ、準優勝は《イノセントバトル》採用型のこれまた防衛タマゴ。残る1枠であるピルルクを使用していたのは、過去愛知にて開催された2回のディーヴァグランプリを両方とも優勝し、愛知3連覇を目論んでいたコーヒー選手でした。

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ピルルクは《UPDATE》を厚く取って緑子のパワーラインに対抗しやすいような構築が勝っていた、という話は先ほど書きましたね。
こちらのベスト4のデッキリストではそれに加えて《羅原姫 ミルルン//フェゾーネ》まで採用されており、より高パワーラインに対抗しやすいデッキとなっているのが分かります。
《コードアート ピルルク//メモリア》と好相性だった《コードアート Sコアボード》が0枚、かつ《TOO BADLY》の枚数が3枚に抑えられているなど、環境に適応するために枚数調整に苦心した跡が伺えます。

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そこで減らしたぶんのレベル1は、非ライフバースト枠に《コードアート Sヨクセンキ》を搭載するという形で補ったようです。
《コードアート Sコアボード》のようなリソース獲得はできませんが、なんといってもこちらはアタックを行なわなくても手札破壊ができるのが強み。《コードアート Sマフォ》と違って相手のアーツや《翠美姫 コンテンポラ》などで手札破壊を途中妨害されることがないため、相手の手札を確実にもぎ取りやすい形になっています。
ただの下級シグニの追加に留まらず別のゲームプランが追加された形となっており、愛知3連覇とはならずとも『メタゲームに適応したピルルク』の存在感は強く示した形となったのではないでしょうか。


というところまで見て、ベスト4のうち3名が防衛タマゴ。このままだとなんだか『青一辺倒の青最強環境でした』みたいな話になってしまいそうなので、もうちょっと下のところまで見てみましょう。
上位に残った防衛タマゴがあまりにもルリグアタックに対して強く、そのせいもあってかタマは使用者数に比例するほどの戦果を残すことができませんでした。では母数最大の緑子は?

結果から言えば、しっかり複数名の予選突破者・そして夢限少女杯の権利獲得者を生み出しています。

ただ、最も上位にいた緑子が流行のアーツ軸ではなく《CONNECTスピニング》採用のアシスト軸だったというのは、なかなかおもしろい点ではないでしょうか。

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アーツやピースでライフをクラッシュし、《CONNECTスピニング》でエナ破壊。そこに《讃型 緑姫》のワナも加えることでさらに3エナを奪って強引な攻めが可能だと考えると、なるほど確かに理にかなっていると言えます。地獣のシグニはもともと赤が多いため、そういうプランを組み込むことも難しくはないでしょう。
《幻獣神 ウルフレンド//ディソナ》《幻獣 テングザル》といった防御貫通に加え、パワーマイナスには《幻獣神 オサコ》のパワー上昇、蘇生系には豊富なアタックトリガーと突破力がバッチリ確保されているのも、ショット系のデッキとしては嬉しいところです。

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新たな《ゼノ・クラスタ》枠とも言える《クラス・ヒストリー》も、新規ルリグ達がアシスト軸で戦う際の原動力となってくれます。
逆に、アーツ軸のデッキに《ミラクル・チャージング》などが採用されることが少なく、大型のエナ破壊が強力だったという点もこのアーキタイプが勝ち上がれた理由のひとつと言えるでしょう。

まとめ

総じて、旧ルリグで戦うにしてもアーツを強力な追加要素にでき、一方新ルリグで戦うにしてもアシスト編成で戦うことができるなど、構築の多様化がかなり目立った結果となりました。

とはいえ、防衛派、ひいてはアシスト軸のデッキが大活躍したという事実は、アーツ軸の研究が優先的に行なわれていたであろう最近の状況を大きく変えうる要因になるのではないでしょうか。
一旦立ち止まって、自分の構築が本当にアーツ軸でいいか・アシスト軸でいいかを見直してみるよい機会かもしれません。

新情報も続々更新され、まだ10周年の興奮冷めやらぬ『ウィクロス』。次のセレモニーに、あるいはディーヴァグランプリに、夢限少女杯に向けて、さらにがんばっていきましょう!

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